前々回、前回に続き今回はピコレーザーについて詳しく深堀りしていきます。前々回ではピコレーザーの原理をご説明しました。レーザーの温熱効果を利用して、あえてダメージを与えることによってコラーゲンの生成を促しお肌の小ジワ改善・ハリ改善・毛穴縮小効果・タルミ改善などの効果が得られるという点、そしてピコレーザーの「ピコ」とはとても小さな単位で、照射時間がとても短くお肌に優しいという点をお伝えしたかと思います。
今回はピコレーザーの使用しているレーザーの波長による効果でアプローチできる「ニキビ跡・肝斑・美肌トーニング・アザなど」の色素由来のお悩みについて順を追って詳しく解説していきます。
専門科目:皮膚科/美容皮膚科。北海道大学精神医学教室、北海道大学救急医学教室、東京慈恵医大救急医学教室にて修練を重ねた経験をもつ。また、銀座にて美容皮膚科医として、都内皮膚科クリニックにて、皮膚科医としての勤務経験をもつ。
光と色について
さて、色素系のお悩みについてご説明する前に、前提として少しご紹介したいことがあります。しっかりと勉強をされてきた方はご存知の内容と思いますが、正直大人になってからは専門家の方や色彩系のお仕事をされている方ではないと馴染みのない情報だと思います。ただ、とても興味深く面白い話ですので是非おさらいとして気軽に読んでみてください。
三原色って聞いたことありませんか?一般的に赤・青・黄色と言われていますね。正確にはコピー機のトナーを想像してもらうとわかりやすいですが、カラーコピー機にはトナーを4本入れることが多いです。マゼンタ(すこし紫っぽい赤)・シアン(水色っぽい青)・イエロー(黄色)の3色と黒です。黒は黒を使う事が多いからというお金の節約の意味で入っているだけなので一旦無視してほしいのですが、マゼンタ、シアン、イエローを混ぜると黒になるのです。小さいころ絵の具を混ぜて色を作った経験があると思いますが、そういうことです。でも、なぜ青は青色に見えるのか。なぜ赤は赤なのでしょうか?
それは、光を反射しているからです。イメージしていただくために簡単にご説明しますが、光にはたくさんの色が含まれています。青は、青色の光を反射しているから青く見えるのです。つまり、青以外は吸収されているということです。
そして、この光、それぞれの色は波で表すことができるのです。波というと山と谷があるイメージですよね。この、山と谷の間の距離がどのくらいの長さかというので実は色がきまるのです。面白いですよね!
ここでご理解いただきたいのは、物には光を吸収(反射)する性質がある、ということです。
波長とは
前項で光は波であることを軽くご説明し、物によってどのような光を吸収(反射)するのか、そして色を決めるのは光の波長、つまり「波」の山と谷の距離であることをお伝えしました。 この距離のことを「波長」といいます。文字通り波の長さですね。
この長さですが、ナノメートル(nm)という単位で表現をします。人間の目に見える色は380nmから780nmという波長の光です。例えば、赤を波長で表現すると、約610~750nmです。これより例えば波長が長くなって800nm以上になると、遠赤外線といって人の目に見えない光となります。赤よりも遠い!なるほど!と思います。逆に紫の波長が400nm~435nmですが、これ以下のより短い波長になると、紫外線です。紫の外!わかりやすいですね。
つまり、物には色(光)を吸収(反射)する性質があり、光(色)には波長があるということです。少しイメージできたのではないでしょうか?ここから一気に「美容」に近づいていきますので今しばらくお付き合いください。
吸光度とは
さて、例えばですが、ニキビを放置してしまって炎症が起こってしまい色素沈着して「茶色く」なってしまった。最近すこし「茶色い」シミができてしまった。
お気づきでしょうか?
そう、お肌のトラブルに、「色」というのは深くかかわっているのです。
つまり、赤色な問題であれば、赤色以外の波長を吸収しているということですね。 茶色であれば茶色以外の波長を吸収しているということです。
ここで思い出してください、前々回でお話ししたレーザーの原理を。レーザーは増幅された光のことです。つまり、レーザーにも波長というものが存在する、ということです。
もうお分かりですよね。シンプルにお伝えすると、例えば赤には赤、黒には黒に効くレーザーの波長がある、ということです!
ピコレーザー:色素系のお悩みへの効果
いよいよ大詰めです。
ピコレーザー、ピコシュアという機械の場合755nmの波長のレーザーを使用します。この波長は特にメラニン色素に対して有効な波長なのです。有効、すなわち吸収されるということです。吸収されると熱を発生し色素の破壊をする、ということです。
さらに、従来のレーザー治療とは異なり、ピコ秒で照射するため、熱が広がりにくく(余計なダメージを与えない)、衝撃波で色素を細かく砕くことが可能なのです。
当クリニックのピコレーザーの治療では、3種類の方法があります。
一つは前回ご紹介したピコフラクショナル。これは少し強めにあててコラーゲンの産生を増やすことを目的とした方法でした。今回の色素系のお悩みに有効な方法が、ピコトーニングとスポット照射です。ピコトーニングは優しくシャワーのようにあてていくため、色むらを改善する美肌トーニングにぴったりの方法です。そして、スポット照射はがんこなシミやタトゥーなどにお勧めしている照射方法です。
まとめ
さて、ピコレーザーについて3回にわたって原理からどのようなお悩みに対して効果があるのかという事を説明してきました。ピコレーザーは最近とても取り入れているクリニックが増えてきています。優しいレーザーということで素晴らしい技術です。ただ、レーザーについての深い理解と、それぞれのお悩みの根源となる色素は何か、それに対して有効な照射方法は何なのかを判断できる知識と経験が必要です。もうひとつ、ピコレーザーはレーザー医療の一種です。レーザーは使用方法を誤ると火傷などのリスクがあります。従ってしっかりとしたクリニックで施術を受けていただくことをおすすめします。また、当院は皮膚科を併設しているクリニックです。アフターフォローもご安心いただけると思いますし、尽きないお肌の、他のお悩みをご相談いただくことも可能です。