ボトックス注射にはイノトックスやコアトックス、ボトックスビスタなどさまざまな種類があります。どの注射を選べばよいのか分からず、迷ってしまう方もいるでしょう。
今回はイノトックスの特徴や効果、ボトックス注射を選ぶポイントについて解説します。これからボトックス注射を受けたいと思っている方はぜひ最後までお読みください。
※イノトックスはKFDA(韓国食品医薬品安全庁)の認可を得ていますが、日本の厚生労働省では承認を取得していません(2023年10月現在)。
聖マリアンナ医科大学医学部付属病院皮膚科、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院皮膚科にて勤務したのち、医療法人社団奏愛会 おおふな皮膚科など皮膚科クリニックにて研鑽を重ね当クリニックにて勤務。
イノトックスの特徴
イノトックスの特徴は次の3点です。
- ●世界約60か国に販売実績のあるメディトックス社が製造
- ●希釈が不要なので感染リスクが低い
- ●動物性由来物質・ヒト血清アルブミンを使用していない
それぞれの特徴について、具体的に説明します。
世界約60か国に販売実績のあるメディトックス社が製造
イノトックスは韓国のメディトックス社製のボツリヌストキシン製剤です。メディトックス社は2006年に韓国で初めてボツリヌス毒素医薬品の販売を開始し、約60か国に対して製品を輸出している実績があります。
現在はイノトックスを含め3種類のボツリヌストキシン製剤を販売しており、メディトックス社で製造されたボツリヌストキシン製剤は多くの国で使用されています。
希釈が不要なので感染リスクが低い
従来のボツリヌストキシン製剤は粉末状で、使用する時は生理食塩水で希釈して注射します。希釈により薬の濃度に差が生じる可能性や、希釈する過程で細菌感染のリスクが考えられます。
一方、イノトックスは液体製剤なので希釈する必要がありません。希釈を必要としないため、濃度が変動することなく細菌感染のリスクを抑えて注射できます。
動物性由来物質・ヒト血清アルブミンを使用していない
従来のボツリヌストキシン製剤には、安定化剤として動物性由来物質やヒト血清アルブミンが配合されていました。しかしこれらの成分はアレルギーを引き起こす可能性があり、ヒト血清アルブミンの副作用として悪寒、発熱、蕁麻疹、アレルギー反応などが知られています。
イノトックスは動物性由来物質やヒト血清アルブミンを配合していないため、従来のボツリヌストキシン製剤よりも副作用のリスクが低いと考えられます。
イノトックスの効果4つ
イノトックスの代表的な効果として、以下の4つがあります。
- ●表情じわの改善
- ●エラの張りの改善
- ●肩こりの改善
- ●脇汗の軽減
それぞれの効果について、詳しく解説します。
表情じわの改善
しわには複数の原因がありますが、表情を変えた時に目立つしわは表情じわと言われ、表情筋の動きが原因で生じます。イノトックスは表情筋の動きを抑制することで、表情じわを改善します。
エラの張りの改善
エラが張る原因として、骨格だけでなく食べ物を噛むための筋肉である咬筋(こうきん:エラの筋肉)の発達が挙げられます。咬筋は食いしばりや歯ぎしりの癖があると発達しやすく、一度発達した咬筋はなかなか小さくなりません。
咬筋の発達が原因でエラが張っている場合、イノトックスにより咬筋の動きを弱めることで張りの改善が期待できます。
肩こりの改善
肩こりは肩の筋肉が緊張することで起こります。肩の筋肉にイノトックスを注射することで緊張をやわらげ、肩こりの改善が期待できます。
脇汗の軽減
イノトックスは脇汗で悩んでいる方にも効果が期待できる治療法です。脇汗はエクリン腺という組織から分泌され、イノトックスはエクリン腺を麻痺させることで脇汗の症状を改善します。
イノトックスが有効な部位
イノトックスが有効な部位は次の通りです。
額のしわ、眉間のしわ、目尻のしわ、鼻根(バニーライン)のしわ、あごのしわ
両脇、肩
なお、注射する部位によって価格は異なります。
イノトックスの効果持続期間は4~9ヶ月程度
注射してから効果を実感するまでの期間は2,3日~2週間程度、効果持続時間は4~9ヶ月程度が目安とされています。
ほかの製剤の持続期間が3~4ヶ月程度であることを考えると、イノトックスは効果が長く続くボトックス注射と言えます。
イノトックスのダウンタイムはほとんどない
イノトックスの注射後、ダウンタイムはほとんどありません。注射後の過ごし方によってはダウンタイムが長引くことがありますので、注射後は次の点に注意して過ごしましょう。
- ●注射した部位を揉まない。マッサージも避ける。
→注射した薬剤がほかの部位に分散するのを防ぐため。 - ●長時間の入浴、激しい運動、飲酒を避ける。
→血行が良くなると腫れや内出血のリスクにつながるため。
ダウンタイムには個人差があります。もし痛みや腫れが長引く場合は医師に相談しましょう。
イノトックスの副作用や注意点
イノトックスの副作用や、使用時の注意点を解説します。
副作用
イノトックスはボトックス注射の中でも比較的安全性が高い製品ですが、注射した部位に内出血が現れることがあります。
また、ほかのボトックス注射で眼瞼下垂(まぶたが下がってくること)、頭痛などの症状が見られています。
妊娠中、授乳中は使用不可
妊娠している方や妊娠している可能性のある方、授乳中の方はイノトックスを使用できません。
イノトックス注射後も一定期間の避妊が必要になるため、今後妊娠を予定している方はあらかじめ医師に相談しましょう。
65歳以上の方には推奨されない
ボツリヌストキシン製剤を使用した臨床試験において、65歳以上の方では65歳未満の方と比較して有効性が低く、副作用のリスクが高いことが分かっています。
副作用救済措置の対象外
イノトックスは日本で承認されていないため、万が一重篤な副作用が生じても救済措置の対象とはなりません。
※ボトックスビスタは厚生労働省により承認されていますが、効能・効果は「65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺」に限られます。ほかの用途に使用する場合は、ボトックスビスタを使用しても副作用救済措置の対象にはなりません。
イノトックスがおすすめな方
イノトックスは次のような方におすすめです。
- ●効果が長期間続くボトックス注射を使いたい
- ●成分の安全性が気になる
- ●注射による感染リスクをなるべく下げたい
イノトックスは効果の持続性、安全性の面から優れています。これらを重視してボトックス注射を選びたい場合は、イノトックスがおすすめです。
当院で扱うボトックス注射の種類と特徴
当院で扱うボトックス注射はボトックスビスタ、コアトックス、イノトックスの3種類です。製造している会社、製剤の特徴、当院の料金をまとめました。
製品名 | 社名 | 特徴 | 料金 |
---|---|---|---|
ボトックスビスタ | アラガン社 | 厚生労働省が承認している | 額・眉間・眉上・目尻・バニーライン・あご・口角 1箇所 22,000円(税込) エラボトックス 1回 44,000円(税込) 脇・肩ボトックス 1回 88,000円(税込) 額マイクロボトックス 1回 44,000円(税込) 首マイクロボトックス 1回 44,000円(税込)〜 ※単位数により 頬マイクロボトックス 1回 44,000円(税込)〜 ※単位数により ボトックスリフト 1回 49,800円(税込) |
コアトックス | メディトックス社 | 複合タンパクを含まず、耐性が付きにくい | 額・眉間・眉上・目尻・バニーライン・あご・口角 1箇所 16,500円(税込) エラボトックス 1回 33,000円(税込) 脇・肩ボトックス 1回 66,000円(税込) |
イノトックス | 液体製剤で希釈の必要がなく、安全性が高い 効果持続期間が長い |
ボトックスビスタ | |
---|---|
社名 | アラガン社 |
特徴 | 厚生労働省が承認している |
料金 | 額・眉間・眉上・目尻・バニーライン・あご・口角 1箇所 22,000円(税込) エラボトックス 1回 44,000円(税込) 脇・肩ボトックス 1回 88,000円(税込) 額マイクロボトックス 1回 44,000円(税込) 首マイクロボトックス 1回 44,000円(税込)〜 ※単位数により 頬マイクロボトックス 1回 44,000円(税込)〜 ※単位数により ボトックスリフト 1回 49,800円(税込) |
コアトックス | |
---|---|
社名 | メディトックス社 |
特徴 | 複合タンパクを含まず、耐性が付きにくい |
料金 | 額・眉間・眉上・目尻・バニーライン・あご・口角 1箇所 16,500円(税込) エラボトックス 1回 33,000円(税込) 脇・肩ボトックス 1回 66,000円(税込) |
イノトックス | |
---|---|
社名 | メディトックス社 |
特徴 | 液体製剤で希釈の必要がなく、安全性が高い 効果持続期間が長い |
料金 | 額・眉間・眉上・目尻・バニーライン・あご・口角 1箇所 16,500円(税込) エラボトックス 1回 33,000円(税込) 脇・肩ボトックス 1回 66,000円(税込) |
※1 2週間以内追加 5,500円
※2 ご希望により追加 +10単位毎12,800円
※3 自由診療により、保険は適用されません。
ボトックス注射の選び方
ボトックス注射には複数の種類があるため、メーカーや知名度から選ぶのではなく、自分のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。これからボトックス注射を検討していてクリニックを選ぶ際は、取り扱っている製剤を必ず確認しましょう。
複数の製剤を取り扱っているクリニックであれば、医師に相談しながら最適な選択ができます。当院でも複数のボトックス注射を取り扱っていますので、お悩みの場合はお気軽にご相談ください。
よくあるQA
イノトックスについて、よくある質問をまとめました。
Q.イノトックスは自分で個人輸入できますか?
イノトックスの個人輸入には医師免許が必要です。注射剤であることからも安全面に配慮が必要な製品のため、ご自身での個人輸入はできません。イノトックスを使用したい場合は必ずクリニックを受診しましょう。
Q.ダーマペンでもイノトックスを使用できますか?
一部のクリニックではダーマペンと同時にイノトックスを注入しています。ダーマペンとイノトックスを併用することで、皮脂の分泌を抑制してテカリやメイク崩れの予防が期待されています。