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アトピー性皮膚炎治療薬「タクロリムス」とは?

公開 2023年5月30日
更新 2024年4月7日

アトピー性皮膚炎は、皮膚の赤みや皮剥けなど見た目に大きく影響が出るため、症状の良し悪しが気になってしまいますよね。治療にはステロイド外用薬が使われることが多く、アトピー性皮膚炎経験者は使ったことがある方が多いでしょう。

アトピー性皮膚炎の治療薬として、ステロイド以外の選択肢があることをご存知でしょうか?

今回は「タクロリムス軟膏」という治療薬について紹介します。ステロイド外用薬との違いについても解説していますので、アトピー性皮膚炎の治療にお悩みの方はぜひご覧ください。

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MBC・麻布十番 院長
山崎 禮子
監修者

聖マリアンナ医科大学医学部付属病院皮膚科、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院皮膚科にて勤務したのち、医療法人社団奏愛会 おおふな皮膚科など皮膚科クリニックにて研鑽を重ね当クリニックにて勤務。

中山 歩実
薬剤師/医療ライター
中山 歩実
ライター

大学病院や市立病院など、さまざまな診療科で薬剤師として勤務を経験。一人ひとりが安心・納得して治療を受けられるようサポートしたいという想いから、現在は薬剤師の傍ら、医療ライターとして活動している。

アトピー性皮膚炎治療薬「タクロリムス(プロトピック)軟膏」とは?効果と特徴

まずは、タクロリムス軟膏の効果や特徴についてみていきましょう。

タクロリムス軟膏(先発品:プロトピック軟膏)は、免疫抑制の作用をもつ塗り薬です。1999年に日本で開発された薬で、今ではアメリカやヨーロッパをはじめとして、世界中で使用されるようになりました。有効成分であるタクロリムスは、体の過剰な免疫反応を抑え、痒み症状をやわらげる作用をもっています。

アトピー性皮膚炎には、表皮や真皮で炎症が起こる、皮膚のバリア機能が弱まって過敏になる、痒みが出るといった特徴がありますが、タクロリムス軟膏では「バリア機能が弱い」ことを利用して、アトピー症状のある部位にだけ効くように作られています。

作用のメカニズムについてみていきましょう。

タクロリムス軟膏が作用するメカニズム

タクロリムス軟膏が作用するメカニズム

通常の皮膚は、細胞が密にひしめきあい、外から異物がほとんど入り込めないようになっています。
ところが、アトピー性皮膚炎の肌は、炎症によってバリア機能が部分的に壊れてしまうのです。細胞と細胞の間に隙間ができているとイメージしてください。アトピーの症状が重い程、この隙間は大きくなります。

タクロリムス軟膏の有効成分は、軟膏の中では比較的大きな粒(分子量)で構成されています。そのため、正常な皮膚から内側へはほとんど浸透しません。
アトピーの症状が重ければ重い程、タクロリムス軟膏は皮膚の隙間から内側へ入ることができます。粒が大きいという特徴があるため「アトピー症状のある部分にだけ効果を発揮する」ことができるのです。

効果の強さは、ステロイド外用薬のランク分類の「ミディアム〜ストロング」に該当します。
赤みや湿疹が少なく、触るとガサガサしているような状態の軽度〜中等度くらいまでのアトピー性皮膚炎に使用されます。「ジュクジュクしている箇所」「傷になっている箇所」には使用できませんので、注意しましょう。

タクロリムス軟膏とステロイド外用薬の違いは?

タクロリムス軟膏とステロイド外用薬の違い

まずはタクロリムス軟膏とステロイド外用薬のメリット・デメリットをみていきましょう。

  タクロリムス軟膏 ステロイド外用薬
メリット ・症状のある箇所にだけ効果が出る ・軽度から重度まで対応できる
デメリット ・重度のアトピーには使用できない
・副作用(皮膚のヒリヒリ感)がつらく続けにくいことがある
・ニキビや皮膚カンジダ症など感染症の原因になることがある
・皮膚萎縮や毛細血管拡張が生じることがある
・長期間の不適切使用で酒さ様皮疹を生じることがある
・ニキビや皮膚カンジダ症など感染症の原因になることがある
タクロリムス軟膏
メリット ・症状のある箇所にだけ効果が出る
デメリット ・重度のアトピーには使用できない
・副作用(皮膚のヒリヒリ感)がつらく続けにくいことがある
・ニキビや皮膚カンジダ症など感染症の原因になることがある
ステロイド外用薬
メリット ・軽度から重度まで対応できる
デメリット ・皮膚萎縮や毛細血管拡張が生じることがある
・長期間の不適切使用で酒さ様皮疹を生じることがある
・ニキビや皮膚カンジダ症など感染症の原因になることがある

タクロリムス軟膏とステロイド外用薬は、どちらも皮膚の炎症を抑える薬です。アトピー性皮膚炎の治療において、どちらがよい・悪いというものではありません。それぞれの特徴を組み合わせながら治療を行っていきます。

例えば、顔や首などもともと皮膚が薄く、ステロイド外用薬の副作用である「皮膚萎縮・毛細血管拡張」が生じやすい箇所には、タクロリムス軟膏が使いやすいでしょう。
症状がひどく、すばやく炎症を抑えるためには、強いステロイド外用薬を使う必要があります。
状態を見ながら適切な薬を選択するのが重要です。

タクロリムスに副作用はある?使用する際の注意点

タクロリムス軟膏には、いくつか副作用や注意点があります。安心・安全に治療をすすめるため、しっかり理解しましょう。

副作用の刺激感に注意

副作用の刺激感に注意

タクロリムス軟膏は、塗りはじめてから1週間程度、皮膚のヒリヒリ感・ほてり・痒みが強く出やすい状態が続きます。その中でも、ヒリヒリとした刺激やそれに伴う痒みは、ほとんどの方に現れる症状です。

アトピーの痒みを抑えるために塗っているのに、逆に痒みやヒリヒリ感が強くなるため「悪化している」「肌に合わないのかも」と驚いてしまう方が少なくありません。特に、皮膚の状態があまりよくない時には刺激感が強く出ます。しかし、この症状はアトピーが悪くなっているわけではなく、タクロリムス軟膏自体の刺激性が原因です。

刺激感を抑えるために、以下のような方法がよいとされていますので、お試しください。

  • ・ステロイド外用薬である程度皮膚の状態を整えてから使う
  • ・お風呂上がりなど、火照っている時に塗らない
  • ・塗った後、少し冷やす
  • ・タクロリムス軟膏を冷やして使う
  • ・保湿剤を塗ってから、タクロリムス軟膏を塗る
  • ・いきなり広範囲に塗らず、狭い範囲から塗りはじめる

日焼けに注意

タクロリムス軟膏を塗っている間は、あまり長時間、太陽の光を浴びないようにしてください。通学や出勤で短時間浴びる程度であれば問題ないですが、外でのレジャー等は避けましょう。どうしても長時間、太陽の光を浴びなければならない日は、朝にタクロリムス軟膏を塗らず、帰宅してから塗りましょう。

ジュクジュクした皮膚には塗らない

アトピーが悪化して、皮膚がジュクジュクしてしまう状態を「びらん」と呼びます。びらんになっている箇所にはタクロリムス軟膏を塗らないように注意しましょう。成分が血液中に入り込み、内服用のタクロリムスを使用した時と似たような副作用(血圧上昇、高血糖、感染症など)が出てしまう可能性があります。

塗りすぎない

タクロリムス軟膏の用法・用量

タクロリムス軟膏は、1日に塗る量に制限があります。保湿剤のように、何度でも塗ってよいというものではないため用法・用量を守って使用しましょう。
成人では、1日1〜2回に分け、1回当たり5gまでの塗布とされています。1本当たり5gのチューブなので、成人は最大で1回1本です。年齢や体格によっては、もっと少ない量に制限される場合もあるため、医師の指示に従ってください。

塗る範囲の目安として、人差し指の先から第一関節まで薬を出した時の量である1FTU(フィンガーチップユニット)という単位を使います。
1FTUの量で、大人の手のひら1枚分の面積に塗るのが適切です。それより薄く広げすぎても、厚く塗り重ねてもいけません。

当院でのアトピー性皮膚炎の治療法

当院では、日本で使用できるアトピー性皮膚炎治療薬の多くを取り扱っています。アトピー性皮膚炎の治療は年々進歩しており、今ではほとんどの方が日常生活に支障が出ないレベルにまで症状を落ち着かせることができるようになりました。

アトピー性皮膚炎の治療薬について簡単に紹介します。

・ステロイド外用薬
アトピー性皮膚炎治療の中心的な薬です。さまざまな強さ(ランク)のステロイド外用薬があるため、症状の程度に合わせて調整できます。

・タクロリムス軟膏
ステロイド外用薬と同様に炎症を抑える薬で、中等度くらいまでのアトピー性皮膚炎に使用できます。ステロイド外用薬の副作用である「皮膚萎縮、血管拡張」などが心配な方にも安心です。

・デュピクセント(注射薬)
湿疹や痒みの原因となる物質が分泌されないようブロックする薬です。ステロイド外用薬などの塗り薬と併用し、2週間に一度のペースで注射します。副作用はさほど多くありません。高い効果が期待できますので、症状の重いアトピー性皮膚炎の方に推奨されています。

・抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤
痒み症状に対し、必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー剤を使用します。
痒みのせいで皮膚を掻きむしり、傷がついてしまうと、細菌などが入り込み感染症を起こしてしまうかもしれません。痒みは我慢せず、薬で症状を抑えましょう。

・エキシマライト(紫外線療法)
皮膚に紫外線を当てることで、過剰な免疫反応を抑えるという治療法です。
エキシマライトについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

今回紹介した「タクロリムス軟膏」を処方する場合、初診料または再診料、お薬代などをすべて合わせて、1回の受診につき1,000円~3,000円程度(3割負担の場合)のご負担になります。
デュピクセントを使用する場合は1回当たり約20,000円のご負担となりますが、高額療養費制度の対象となる可能性がありますので、ご確認ください。

タクロリムス軟膏に関するよくあるQA

タクロリムス軟膏について、よくあるご質問にお答えします。

Q.内服のタクロリムスと同じような副作用が出るのではないかと不安です。

内服のタクロリムスは、臓器移植をなどで強力に免疫を抑える必要がある場合に使われる薬です。同じような作用・副作用がでたらと考えて不安になってしまうお気持ちはよく分かります。
ただ、タクロリムス軟膏を皮膚の上から塗る場合には、血液中にはほとんど薬の成分が入らないことが分かっており、内服薬と同じような作用は出ません。また、安全に使用するために、「びらんの箇所には塗らない」という決まりがあります。 指示された使い方を守っていれば、内服のタクロリムスと同じような副作用が出る心配はほとんどありません。

Q.がんになる副作用があると見たのですが、安全ですか?

タクロリムス軟膏の使用と「がん」の関連はありません。

以前は、タクロリムス軟膏を長期的に使用することで「皮膚がん」や「リンパ腫」になるリスクが懸念されていました。タクロリムス軟膏を用いた動物による実験でがんを生じるケースがいくつかあったためです。 しかしその後、タクロリムス軟膏を使った約5000名の患者さまを対象に数年間にわたってがんの発症を調べましたが、無関係であることが分かりました。タクロリムス軟膏を使用した方と使用していない方では、がんの発症率に差はありません。