十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、ニキビのほかにも、湿疹や蕁麻疹、膿など、皮膚のさまざまな状態に対して使用できる漢方薬です。
よくあるご質問
十味敗毒湯はニキビに効果がありますか?
十味敗毒湯は、ニキビのうち、炎症が起きている「赤ニキビ・黄ニキビ」の改善に効果的です。白ニキビの段階ではあまり推奨されていませんが、ほかの治療法でうまくいかない時には使う場合があります。
十味敗毒湯はどのくらいで治りますか?
基本的には、ニキビが出はじめてからなおるまでは1日3回で服用を続けるのがおすすめです。ある程度改善してきたら、服用回数を減らして様子を見てもよいかもしれません。
ニキビができやすい方は、服用回数を調整しながら継続して服用するのがよいでしょう。
十味敗毒湯は女性ホルモンにどのような効果があるのでしょうか?
十味敗毒湯に含まれる「桜皮(オウヒ)」という生薬は女性ホルモンの一つであるエストロゲン生成を促し、ホルモンバランスを整える効能があります。そのため、生理前や生活習慣の乱れから来るニキビを抑制する働きがあり、特に成人女性の大人ニキビに有効といわれています。
ニキビに効く漢方薬は?
ニキビの改善に効果が期待できる漢方薬をご紹介します。
漢方には、副作用が生じる場合があります。
副作用の症状が見られた場合はただちに医療機関に相談しましょう。
十味敗毒湯(※):中程度の体力で、炎症や化膿のある赤ニキビ・黄ニキビ
桂枝茯苓丸:中程度の体力で下半身が冷え、生理に伴うトラブルのニキビ
桂枝茯苓丸加薏苡仁:中程度の体力で下半身が冷え、生理に伴うトラブルのニキビ
荊芥連翹湯(※):中程度の体力で肌の色が浅黒い、面ぽう(コメド)・赤ニキビ・黄ニキビ
当帰芍薬散:体力がなく冷え性、赤みがなく小さなニキビ
桃核承気湯(※):体力がありのぼせやすい、生理前や便秘により悪化するニキビ
※甘草が含まれるため、併用に注意が必要な漢方薬です。
聖マリアンナ医科大学医学部付属病院皮膚科、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院皮膚科にて勤務したのち、医療法人社団奏愛会 おおふな皮膚科など皮膚科クリニックにて研鑽を重ね当クリニックにて勤務。
十味敗毒湯とは?ニキビ、湿疹などの改善に使われる漢方薬
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、ニキビのほかにも、湿疹や蕁麻疹、膿など、皮膚のさまざまな状態に対して使用できる漢方薬です。
十味敗毒湯の効果
十味敗毒湯は、以下の10種類の生薬を配合してつくられています。
桔梗(キキョウ)、 柴胡(サイコ)、 川芎(センキュウ)、 茯苓(ブクリョウ)、防風(ボウフウ)、甘草(カンゾウ)、荊芥(ケイガイ)、生姜(ショウキョウ)、樸樕(ボクソク)、独活(ドクカツ)
※クラシエの製品は、桜皮(オウヒ)も含まれる
東洋医学では、からだの不調は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスの乱れによって生じると考えます。
「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその働き、「水」は血液以外の水分のことです。これらがバランスよく体内をめぐるようにサポートする目的で、漢方薬がつくられました。
十味敗毒湯は、からだに溜まった「水」や熱を発散させることで、肌を健康な状態へ導くような作用があります。体力が中等度あり、あまり胃腸の弱くない方に向いている漢方薬です。
十味敗毒湯はどんなニキビに効く?効果が出る時期は?
十味敗毒湯は、どのようなタイプのニキビに効果が出やすいのでしょうか。
漢方薬は、体質や肌の状態に合わせたものを使うことが大切です。状態に合っていなければ「気・血・水」のバランスが悪化してしまう可能性もあります。
ニキビには、いくつかの段階があります。
・白ニキビ ニキビの初期段階です。毛穴に皮脂が詰まり、少しポツッと膨らみはじめます。まだあまり目立ちません。この状態は、面皰(めんぽう)とも呼ばれます。
・黒ニキビ 白ニキビから少し進行し、毛穴が開き出した状態です。皮脂が空気に触れて酸化され、黒っぽくなるため、やや目立ちます。
・赤ニキビ 炎症を起こし、ニキビの周囲が赤く腫れた状態です。ニキビが大きく膨らんでくるため、気になって触ってしまい悪化することもあります。
・黄ニキビ 炎症がさらに悪化し、赤く腫れたニキビの中心が白〜黄色っぽく見えるようになった状態です。内側に膿が溜まっています。
十味敗毒湯は、ニキビのうち、炎症が起きている「赤ニキビ・黄ニキビ」の改善に効果的です。白ニキビの段階ではあまり推奨されていませんが、ほかの治療法でうまくいかない時には使う場合があります。
東洋医学の考え方では、ニキビができるのは「熱」や「水」の乱れが原因です。十味敗毒湯のもつ、水のめぐりを改善する作用や、それにより熱を発散させる作用で、ニキビ肌を改善に導きます。
十味敗毒湯は、初期のや炎症や小丘疹、小膿疱があるニキビに効果的です。
十味敗毒湯の副作用と使用時の注意点
漢方薬は自然由来で安全と思っている方も少なくありませんが、薬である以上はいくつかの副作用や注意点があります。
胃の違和感
十味敗毒湯を服用すると、胃がムカムカする、食欲が低下するといった副作用を感じる方がいます。
体質として、胃腸の弱い方にはあまり向いていませんので、胃の症状を感じる方は服用をやめましょう。漢方薬は、体質に合わないものを使ってもうまく効果が得られません。
副作用の症状を感じたら、早めに医療機関に相談しましょう!
好転反応は生じにくい
服用をはじめた時に、一時的にニキビが悪化する「好転反応」は起きにくいと言われています。ただし、十味敗毒湯は効果が出るまでに数週間かかることがあるので、服用をはじめたとしても、すぐにはニキビが改善しないかもしれません。しばらく服用を続け、様子を見てください。
数週間続けてみても効果がない・悪化しているという場合は、体質や肌状態に合っていない可能性がありますので、再度ご相談ください。
漢方薬の効果はすぐに発揮されないため、数ヶ月の内服をおすすめします。
ほかの漢方薬や利尿薬との飲み合わせに注意
十味敗毒湯に含まれる「甘草(カンゾウ)」という生薬は、血液中のカリウムを減らす副作用があります。そのため、甘草が含まれるほかの漢方薬や、カリウムを減らしやすい利尿薬などと一緒に服用すると、カリウムが減り過ぎてしまうかもしれません。内服をしている間はいつでも起こりえる副作用ですので、注意してください。
カリウムが減り過ぎると、高血圧・むくみ・手足に力が入りにくいといった症状が出ます。漢方薬や利尿薬を使用している場合は、あらかじめ医師に申告してください。
<甘草が含まれる代表的な漢方薬>
- ・芍薬甘草湯
- ・防風通聖散
- ・補中益気湯
- ・葛根湯
- ・防己黄耆湯
- ・清上防風湯
たくさん内服をしている患者さんは、診察時に医師又は看護師にご相談ください。
十味敗毒湯の正しい飲み方
十味敗毒湯は、食前(食事の30分〜1時間前)または食間(食事と食事の間)に内服してください。
一部の生薬(漢方薬の成分)は、腸内細菌に分解されることで効果を発揮します。そのため、腸内にほかの食べ物や薬がない状態で漢方薬を服用した方が、高い効果が得られやすいと考えられているためです。
飲み忘れてしまった場合は、食後でも問題ありません。ただし、2回分を一度に服用するのはやめましょう。
また、漢方薬はお茶やコーヒーなどではなく、ぬるま湯または水で服用します。漢方薬はもともと煎じ薬(お湯で煮出して飲む薬)だったため、ぬるま湯で服用すると煎じた時と同じように独特の香りや味を引き出すことができ、効果もよいと考えられています。
粉薬が苦手だという方は、コップの中でぬるま湯に溶かしてから服用する方法をお試しください。
食間又は食前の内服をおすすめしてます。
十味敗毒湯以外のニキビ治療の漢方薬
当院では、ニキビ治療で十味敗毒湯のほかにも漢方薬を用意しています。ニキビの状態や体質に合わせ、適切なものを処方します。
・清上防風湯(せいじょうぼうふうとう) 体力が中等度以上あり、脂性肌の方の赤ニキビに使われます。顔にこもった熱を冷ますことで、ニキビを改善に導く漢方薬です。大人の方よりは、思春期のニキビに効果が出やすいです。清上防風湯にも甘草が含まれるため、十味敗毒湯との併用には注意が必要です。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
十味敗毒湯や清上防風湯よりも推奨レベルは下がりますが、桂枝茯苓丸を使うこともあります。「血」のめぐりを改善することで、ほてりやのぼせを改善することでニキビを改善に導く漢方薬です。生理痛や生理不順などにも使われることがあり、生理周期に合わせて悪化するニキビに向いています。
ニキビ治療でいくつか漢方薬があります。十味敗毒湯で効果がなければ、他の漢方薬の切り替えも検討していきます。
当院でのニキビに対する治療法
当院では、漢方薬以外にもさまざまなニキビ治療をおこなっています。
当クリニックで行う保険適用と保険適用外のニキビ治療についてまとめました。治療を受ける際の参考にしてください。
ニキビ治療一覧
保険診療は、比較的軽度のニキビや、思春期の「アクネ菌」が大きく関わるニキビの治療に向いています。毎日コツコツ続けることで、ニキビの悪化を防ぐことができます。
保険外診療の治療は、成人をこえてもニキビを繰り返してしまう方や、ニキビ跡を改善したい方に向いています。ニキビができにくくなるような、肌質改善を目指すことができる点が保険診療との大きな違いです。
<保険診療> 保険適用で3割負担
治療法 | 対応できる ニキビの種類 |
効果が出るまでの 期間 |
費用 |
---|---|---|---|
ペピオゲル ベビオローション (外用薬) |
白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ | 2〜3ヶ月 | ペピオゲル1,401円/1本15g ベピオローション1,471円/1本15g |
ディフェリンゲル (外用薬) |
白ニキビ、赤ニキビ、毛穴の詰まり | 3ヶ月 | 1,236円/1本15g 保険適用3割負担で370.8円/1本15g |
アクアチム (外用薬) |
赤ニキビ | 1週間~1ヶ月 | 軟膏 1本(10g)245円 ローション1本(20ml)490円 クリーム 1本(10g)245円 |
ダラシン (外用薬) |
赤ニキビ、黄ニキビ | 2週間~1ヶ月 | ダラシンTゲル1本10g 329円 ダラシンTローション1本 20ml 658円 |
ビブラマイシン (内服薬) |
赤ニキビ、黄色ニキビ | 1~3週間 | 12.5円/錠(50mg) 22円/錠(100mg) 保険適用3割負担 |
ミノマイシン (内服薬) |
赤ニキビ、黄色ニキビ | 1~3週間 | 1錠19.10円 12歳以上のざ瘡 1回50mg〜100mg 経口1回〜2回 |
面ぽう圧出 | 白ニキビ、黒ニキビ | 直後〜 | 490円/回の3割負担 |
ペピオゲルベビオローション(外用薬) | |
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対応できる ニキビの種類 |
白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ |
効果が出るまでの期間 | 2〜3ヶ月 |
費用 | ペピオゲル1,401円/1本15g ベピオローション1,471円/1本15g |
ディフェリンゲル(外用薬) | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
白ニキビ、赤ニキビ、毛穴の詰まり |
効果が出るまでの期間 | 3ヶ月 |
費用 | 1,236円/1本15g 保険適用3割負担で370.8円/1本15g |
アクアチム(外用薬) | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
赤ニキビ |
効果が出るまでの期間 | 1週間~1ヶ月 |
費用 | 軟膏 1本(10g) 245円 ローション1本(20ml) 490円 クリーム 1本(10g) 245円 |
ダラシン(外用薬) | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
赤ニキビ、黄ニキビ |
効果が出るまでの期間 | 2週間~1ヶ月 |
費用 | ダラシンTゲル1本10g 329円 ダラシンTローション1本 20ml 658円 |
ビブラマイシン(内服薬) | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
赤ニキビ、黄色ニキビ |
効果が出るまでの期間 | 1~3週間 |
費用 | 12.5円/錠(50mg) 22円/錠(100mg) 保険適用3割負担 |
ミノマイシン(内服薬) | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
赤ニキビ、黄色ニキビ |
効果が出るまでの期間 | 1~3週間 |
費用 | 1錠19.10円 12歳以上のざ瘡 1回50mg〜100mg 経口1回〜2回 |
面ぽう圧出 | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
白ニキビ、黒ニキビ |
効果が出るまでの期間 | 直後〜 |
費用 | 490円/回の3割負担 |
はじめに保険診療の外用剤や内服で、ニキビケアをしていくことがお勧めです。
<保険外診療>
ケミカルピーリング | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
・白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ ・ニキビ跡 |
効果が出るまでの期間 | 6ヶ月〜 (1ヶ月1回ペースで6回〜) |
費用 | 4,500円~20,000円 |
イオン導入 | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
・白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ ・ニキビ跡 |
効果が出るまでの期間 | 3ヶ月〜 (1週間に2回ペースで3ヶ月〜) |
費用 | 5,000〜15,000円 |
ダーマペン | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
・白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ ・ニキビ跡 ・その他(毛穴の開き、クレーターなど) |
効果が出るまでの期間 | 7ヶ月〜 (1ヶ月半〜2ヶ月に1回のペースで5回〜) |
費用 | 20,000〜30,000円 |
ポテンツァ | |
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
・白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ ・ニキビ跡 ・その他(毛穴の開き、クレーターなど) |
効果が出るまでの期間 | 4ヶ月半〜 (1ヶ月半〜2ヶ月に1回のペースで3回〜) |
費用 | 100,000〜200,000円 |
フォトフェイシャル (ステラM22) |
|
---|---|
対応できる ニキビの種類 |
・白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ ・ニキビ跡 ・その他(毛穴の開き、クレーターなど) |
効果が出るまでの期間 | 5ヶ月〜 (1ヶ月に1回のペースで5回〜) |
費用 | 10,000〜50,000円 |
ニキビ跡の色素沈着やクレーター治療には自費治療が有効です。
十味敗毒湯についてよくあるQA
十味敗毒湯についてよくある質問に回答します。
Q.十味敗毒湯はニキビがある時だけ服用するのですか?
基本的には、ニキビが出はじめてからなおるまでは1日3回で服用を続けるのがおすすめです。ある程度改善してきたら、服用回数を減らして様子を見てもよいかもしれません。
ニキビができやすい方は、服用回数を調整しながら継続して服用するのがよいでしょう。
Q.十味敗毒湯と清上防風湯の違いは何ですか?
十味敗毒湯はニキビの初期、炎症が少し弱めの時期によく使われます。小さめのニキビがポツポツとある時に使うイメージです。
清上防風湯は、脂性肌傾向で、炎症(赤み)や膿の大きいニキビに向いています。思春期ニキビや、大きく膨らんでしまったニキビが該当します。
抗面包作用や抗炎症作用があるため、初期のニキビによく使われます。